今回は、先月終了した米金融緩和を振り返ってみる事にしたいと思います。
2008年11月に始まった米国の金融緩和は、QE1、QE2、QE3と3回に分けて6年弱に渡って実施されました。その推移や規模、効果と副作用を検討してみたいと思います。
米金融緩和の規模と推移
QEとは金融緩和(Quantitative easing)の略です。過去3回の規模と時期をまとめてみます。
QE1(2008年11月から2010年6月)
米国債:3,000億ドル
MBS(住宅ローン担保証券):1兆2,500億ドル
その他:1,750億ドル
合計:1兆7,250億ドル
QE2(2010年11月から2011年6月)
米国債:6,000億ドル
合計:6,000億ドル
QE3(2012年9月から2014年9月)
米国債:9,180億ドル
MBS(住宅ローン担保証券):6,700億ドル
合計:1兆5,880億ドル
QE1からQE3(2008年11月から2014年10月)
米国債:1兆8,180億ドル
MBS(住宅ローン担保証券):1兆9,200億ドル
その他:1,750億ドル
合計:3兆9,130億ドル
QE3は、QE1、QE2と違いあらかじめ規模等を決めていなかった点が異なります。
米金融緩和の効果と副作用
米金融緩和は、リーマンショックからの回復に大きく貢献した事は事実でしょう。ダウ平均は、この6年間で約77%上昇しました。
ダウ平均(Dow Jones Industrial Average)
2008年10月1日: 9,325
2014年10月1日:16,544
失業率も大きな改善をしています。
失業率
2009年 9.28%
2014年 6.29%(IMFによる10月時点の推計)
しかしながら、FED(FRB)の純資産は、QE開始前の1兆ドル弱から4兆ドル超へ大きく膨らんでいます。効果はあったものの、払った代償も大きかったのではないでしょうか。金融緩和の副作用としての筆頭は、このバランスシートの大幅な変化ですが、他に細かい点として次の事が挙げられます。
(1)自社株買いによるEPSの押上げ
長年の金融緩和とゼロ金利政策の影響で、低金利の社債などで資金を調達して自社株買いを行う事が活発化しました。この為、見かけのEPSが上昇する現象がみられています。売り上げ増加に伴う利益上昇でEPS増加した訳ではない企業が多く存在する事は、留意すべき点と言えるでしょう。
(2)オートローン残高の上昇
同じく低金利を背景に、過去最高レベルにオートローン残高が上昇しています。サブプライム層への審査も甘く、リーマンショックの引き金となった證券化の動きもある様です。また一部では、学生ローンなども同様の懸念が指摘されています。住宅ローンについては厳格化されましたが、同じような手法が繰り返される懲りない消費社会という面に米社会の課題もある様に思えます。
まとめ
依然、人工的につくられた回復から自律的なものへバトンタッチできるか否かというのが現時点の状況でしょうか。FED(FRB)の資産バランスが改善し、金利がある程度上昇するまで、あと数年かかると思われますので、リーマンショックからの完全回復からは、結局のところ、10年弱を要する事になるのかも知れません。
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